失われた30年の人事の功罪
- 林明文

- 11月4日
- 読了時間: 3分
更新日:11月7日
この30年間人事は少しずつ発展をしてきました。その時々の人事の課題に対応して徐々にではありますが、人事管理は進化してきたといえます。しかしこの30年間の企業の業績や人件費の指標を見ると必ずしも多大な発展してきたといえません。例えば実質所得はこの30年間で低下しています。このひとつを取ったとしても30年で社員の暮らしが良くなっていないという人事管理が進化していないことを物語っています。
そもそもこの30年間で企業業績が伸びなかった主要な原因のひとつとして、人事管理が機能していなかったという指摘もあります。確かにこの30年間人事管理に対する基本的な考え方も大きな変更はなく、多くの企業が年功序列、終身雇用から脱することができませんでした。そもそも人事管理は経営計画を達成するために必要な人材を揃えること(ポートフォリオ)、そしてその人材が一年間より高い成果を上げること(パフォーマンス)この2つが重要な機能です。この2つの重要な機能が十分に働いていたかと振り返ると、ポートフォリオについては全く機能してないと言えます。パフォーマンスについては多少の働きはあったものの、パフォーマンスの原点である人事制度、特に評価については何ら発展がなく、全体として大きく発展した評価できません。
また他国と比較して経営人材のレベルが低く、グローバルで戦える人材育成が十分ではありませんでした。それ以前に経営者の成長マインドが低く、バブル崩壊後の内向的な経営スタンスを大きく改善できませんでした。そのため新たなイノベーションをもたらす投資も非常に少なかった状況です。なるべくコストを抑えるために正社員の人件費は抑制しまた非正社員を多く使う手法が用いられてきました。
グローバルな成長をしていくためには、社員に対する教育はもちろん海外経験などのローテーションを徹底しなければなりません。残念ながら30年前の企業のグローバルリテラシーと現在と比較しても大幅に変わっているとはいえないでしょう。
このように30年間の人事管理については反省すべきが8割、肯定するべきところが2割といったところでしょうか。肯定するべきところというのは社員の働き方に対してさまざまな保護がなされた点です。しかし経営に貢献するポートフォリオ管理とパフォーマンス管理について合理的な研究はされておらず、また個別企業でも合理性、科学性に基づいた人事管理は行われていません。そのため人事管理は感覚的、定性的な情報に基づいた合理性を欠いた施策を行う傾向といえるでしょう。
もし30年間人事管理が完全な状態であったとしたら、企業の業績は格段に上がっていたと思います。30年間の低迷の重要な原因のひとつは人事にあると認識すべきでしょう。そしてその逆に今後の成長のために人事はひとつの重要なキーを握っていると考えるべきです。経営戦略、計画を実現するための重要な機能として果たすべく責任は極めて大きいと再認識しなければなりません。
*YouTube番組 Dig Deep人事「人事管理の功罪」を参考に執筆


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